・・・・・・・・★11・・・・・・・・
「本当は『野戦病院』って、名前にしたかったんだけどな。それじゃあ、お客さん、来る気が起きないだろうから止めたんさ」
「姉さん、最近、ジイジの影響で、理屈ぽくなたんだって。ステフ、聞いてても、チンチンプンプンなんだよ」
「チンプンカンプンだろ。言葉は正確に覚えろよ。ステフ」
「オホン。奈津、考えるに、都会の現代人は、仕事の効率ばかりを追い求めて、人間的な心はどこかに置き去りにしてしまっている。知らず知らずのうちに、自分の心の動きにも、他人の想いにも、鈍感になってしまっている。平気で他人の心を、いや、自分の心さえも傷つけている。昔の私のアホ亭主みたいにね」
「で、奈津はさらに考える。効率優先とストレス過剰の複雑な現代仕事社会。そこで生きる都会人は、多かれ少なかれ、皆、心に傷を負っている。その傷ついた心を、心の傷の面では先輩の私達が、私達天使二人が、優しく慰めて、癒してあげるのよ。胃の中のアルコール消毒と、おいしい家庭料理と、奈津の温かな毒舌と、ステフの豊満な胸と笑顔で。ジイジ、聞いとるか?」
「聞いてるよ」
「言わば、『C&M』は、現代社会の企業戦士のための野戦病院なのよ。傷ついた可哀想な兵士達の士気を回復させて戦場に戻してあげるんだ。人間的心を取り戻してあげるのよ」
「だってさ。ジイジ、意味、わかっか?」
ジイジ、手をたたく。
「奈津、演説、終わったか。たかが、スナック・バーを経営するのに、ちょっと、その理念、崇高すぎやしないか?」
「ジイジ、たかがとは、何だ。たかがとは。腹が立った。明日はメシ抜きだ」
「そうだ。そうだ。明日はメシ抜きだ。姉さん、それだけじゃなく、反省するまでセックスも抜きにしてやれ」
「ありがたい。当分、反省なんか、しないぞ」
「そいでよ。このところ、ずっとジイジ一本主義で通してきたけどよ、ジイジがしばらくこの家から消えるんだよな。奈津、男なしで生活するなんてことは、金輪際、無理だからな。だから、いい男がいたら、適当にセックス楽しむからな。ジイジと結婚しているわけでもないんだから、不倫でもないよな。だから、ジイジもフィリピンでいい女がいたら、セックスを忘れないように、せいぜい頑張れよ」
「わかった。肉体的な面はそうしよう。つまり、セックスはお互い自由に愉しもう。でも、今まで築きあげた精神的結びつきは絶対に失いたくない。帰ってきたら、もう一度、紙切れ1枚、信じてみないか?」
「なんだよ。それ、ひょっとしてプロポーズか?」
「そうだ。奈津のいない生活は、もう考えたくない。熟年結婚、はやってるし」
「ジイジは確かに熟年だけどよ。あっしはまだ女盛りだで。悩むなあ。でも、ジイジが泣いて頼むというなら、考えてやらないこともないかな」
「奈津が見たいなら、おいおい泣いて土下座して、頭、地面にこすり合わせて頼んでもいい」
「ステフも、見たい。見たい」
「でもよ。結婚したら、車椅子の歳とったジイジのパンパースを交換することまで考えておくことも必要あるな。あっしの未来は介護おばさんかい。ウ~ン。それまでは、自由奔放に生きるからな。男遊びもたっぷりすっからな。そんでも、いいか? ジイジ」
「ノー・ジンジャーだな」
「ジイジ、まだジイジとの間接的な血の繋がりを作ること、諦めていないんだけど・・。期待できそうにないのかなあ」
「歳だからなあ。御免。無理かもしんない」
「歳を取ったときのことを考えると、一人ぼっちだと寂しいわねえ。最近は心が穏やかになったせいか、子供を産むことにあまり抵抗がなくなったみたいなんだ。ジイジのお陰だよな。だから、いい男と楽しんだ結果、妊娠したら、きっと生みたくなると思う。もう一度、シングル・マザーとして頑張ってみようかと思っているんだ」
「トラウマで傷ついていた頃を考えると大進歩だな。うれしいよ」
「そいでよ。ジイジ、子持ちの奈津でも、結婚を申し込むこむ決意はあるか?」
「あるさ。奈津の子なら私も愛せるに決まっているだろ」
「そうか、ジイジ。紙切れの話、受けてやってもいいぞ」
奈津、キッチンで、天ぷらを揚げている。リビングの食卓に、雅美を抱いたステファニーとジイジが掛けている。
「二人して野戦病院で、ナイチンゲールを気取って奉仕活動か。考えてみれば、お前ら、もともと、ないチン・ガールだぞ」
「ジイジ、意味わかんない」
「つまり、チンチンのないガールだってこと」
「うわっ、なによ、それ。ジイジ、最近、姉さんに影響受けて、下品なことを平気で言うようになってる」
「私も、そうじゃないかと自覚しているんだ。下品は伝染するんだ。悪貨は良貨を駆逐するってな」
「そうなんだよな。ステフも、下品なことを平気で言ってしまうんだ。全部、姉さんから伝染したんだからね」
奈津が、天ぷらを運んでくる。
「おいこら、そこの二人、あっしのこと、何か、言ってなかったか。鼻がムズムズしたぞ」
「相変わらず、カンの鋭い、ミス・ゲヒンだな」
「なんだ、それ」
「姉さん、アッカはリョウカをチクチクするんだよ」
「・・・・・」
「ステフ、お店が病院なら、白衣を着て、お店に出ようかな」
「それだけは、やめておけ。コスプレのお店と勘違いされる」
「パパ、コスプレのお店って、な~に?」
「コスチューム・プレーって言ってな。女子高校生やオフィス・レディの制服を着て性的サービスを提供するお店だ」
「わあ、面白そう。ステフ、女子高校生やオフィス・レディのユニフォーム、着てみたいわ」
「ステフ、お前の神経、まともじゃないぞ」
「パパ、ありがとう」
「ほめてなんかいない」
「それで、パパ。性的サービスって、な~に?」
「奈津に聞け」
「ひょっとして、姉さんがいつもパパにやっているようなことじゃない?」
「知っていたら、聞くな。カマトトぶりやがって」
「パパ、カマトトって、な~に?」
「もう、いい。ステフ、おまえのことだ」
「でも、姉さんの女子高生の制服姿、見てみたいな」
「そうだな。ジイジも見たくなった。怖いもの、見たさってあるからな」
奈津、さらに、天ぷらを運んでくる。
「おいこら、また、あっしのこと、何か、言ってなかったか?」
「ジイジがコスプレが好きなんだって。姉さんに女子高生の制服を着せて性的サービスをさせたいんだって」
「・・・・・」
「そんなこと、言っとらん」
「傑作だよな。ジイジとの出会いは、万引きなんだものな。将来の漠然たる不安、悲しみを共有する相手がいない寂しさから、心のバランスを崩していたみたいなの。衝動的に万引きをしてしまったのかな。でも、一期一会の最高の万引きだったわ。こうして、ジイジと知り合えたんだもの。ジイジのお陰で、男性不信のトラウマも克服できたようだし・・」
「雅也とママは、私が殺したって思い、まだまだ、心に残っているの。でも、ジイジと姉さんがいつもそうじゃあないって、言ってくれるでしょ。私って単純だから、最近は,ステフのせいじゃないって、思うようになっている。単純って言うの、良い面もあるのね」
「奈津は今まで付き合ったことがない種類の女性だった。奈津との共同生活で、生き方、考え方、感じ方がすっかり変ってしまった。そろそろ、雅也の愛したフィリピンでボランティア活動をしようと考えているんだ。病気になる以前の自分からの完全脱皮だ」
内野家の3人。失ったものに代る新たな人間関係を作り上げ、新たなる活動に入る時期が来たようだ。
人生は闘いだ。
自己の内部の闘い。自分の夢や理想との闘い。
闘いは充実感をもたらす。
闘いのない人生なんて、炭酸の抜けたコカ・コーラみたいなもの。
そして、闘いの舞台は、フィリピンへと、野戦スナック『C&M』へと移されていく。
・・・・・・・・★12・・・・・・・・
ずっと、ジイジの1本できていたのよね
愛するジイジといつでもセックスできるから我慢していたけど、ジイジがフィリピンに行ってしまった今、無性に若い男が欲しくなっているの。通りで、若いハンサムな男なんかとすれ違ったりすると、むらむらと股の間がうずくのよ。パンティーがじっとりと濡れてしまっているの。
もう我慢するのがつらいわ。我慢汁って、女性にもあるのかしら。
もう開き直ったわ。無駄な抵抗は止めることにしたの。おおっぴらに、男とセックスを楽しむことにしたの。私って、昔から、貞操観念のない、ゆるい女だったのよね。男にいつも開かれている、都合のいい女だったんだから。ジイジのいない間、以前の私に戻るだけよ。
そう心が決まった途端、気が楽になったわ。
どこで、どんな男をハントしようかと、舌なめずりしている私がいたの。本当、私って、はしたない淫らな女なのよね。ウフフフ。
若い男とできる。いい男とやれる。うれしくなってしまったわ。
さあ、男探しよ。張り切ってしまうわ。
夜の街で、やりたがっている男をひっかけるのは、割と簡単なんだけれども、精神的にもルックス的もこちらが納得できるような男があまりいないのよね。私、好き者でも、誰とでも見境なくってわけにもいかないのよ。裸と裸でお互いの汚れている部分も舐め合わなきゃいけないんだものね。私、これでも、男の好みにはうるさいのよ。嫌いな男は、触るのも嫌、一緒に息するのも嫌だもの。
週末になると、駅に行く途中のテニスコートで若くて爽やかな感じの男達がいつもテニスに興じているのよ。その姿を見て、誰か一人、欲しくなっちゃっていたの。抱いて可愛がってあげたい感じの子がいるのよ。アディダスの真っ白いテニスショーツで走り回る男の股間をじっと見つめて、ペニスを啜ってあげている自分の姿なんかを想像しちゃっているの。そんなとき、私って、いやらしい、因果な女なんだと嫌悪感が湧いちゃっていたわ。でも、持って生まれた資質なのよ。しょうがないわよね。
涎を垂らした男達は杉並区のテニス愛好会に属していると、コートの管理人から聞き出したの。
善は急げよ。そこで、ステフを誘って、その会に一緒に入会したの。ステフには、中年女性の体力作りを前面に押し出して、説得したわ。二人でその会の定例会に出ると、学生を中心に、若いスポーツマン志向の、女をあまり知らなそうな男が結構いたのよ。うれしくなっちゃったわ。
でも、ステフは騙せないわね。
「怪しいな、姉さん。体力をつけるんじゃなく、男探しが目的なんでしょ。姉さんにとっては、テニス愛好会じゃなくて、ペニス愛好会なんじゃないの?」
「ちっ、ばれたか。お前、相変わらず、勘だけはいいな」
「急にテニスだなんて、おかしいと思ったわ。若くていい男が大勢いるんだもの。ピーンときたわよ。目的は、テニスじゃなくて、ペニスよね。ウフフ。私も、この会で、ペニス2、3本、調達したいな。姉さんとかぶらないようにするから、いいでしょ」
「そんなこと、個人の自由だろ。5本でも6本でもどうぞ、どうぞ。気が済むまで味わいなさいな。でも、このこと、ジイジには内緒よ。口では強がっているけど、すごく妬いてしまうのがわかるもの。私がやりたいとき、傍にいないのが悪いのよね」
「でも、ステフ、私に雅美を押し付けて、週2、3回、前のお店のお客さんとデートしているんじゃないの?」
「一応、セックスの方は満足しているんだけど。皆、50を過ぎたおじさんばかり。すぐイッてしまうし、淡白なの。かなり物足りないのよ。長い時間、ねちっこく、激しく攻められたいわ。お小遣い、いただけるから、まあ、いいんだだけれど、私、すごく気を使っちゃうの。たまには、若くて威勢のいいお兄さんと私のペースで自由気ままにやりたいわよ」
私、形から入るタイプなの。
テニスラケット、テニスバッグ、ピンクのテニスシューズ、テニスウェアとして、ノースリーブのタンクトップとレギンス。
新しい物、買い揃えたわ。あっと言う間に10万円の出費になっちゃった。でも、新しいペニスの獲得のためと考えれば、安いものよね。
定例会で、いやらしくない程度に面通しだけはしておいたわ。私が股間を舐めてあげる妄想をいだいた細身のイケメンは伊藤君。長身でセンスのいいスポーツマンタイプは遊佐君。筋肉質で胸板の厚いイケイケタイプは木村君、皆、1キロ程、先にある明蹊学院大学の新入生であることが判明したわ。
でも、テニス方は遊佐君以外は、皆、初心者レベル。私とそんなに変わらない感じ。そこで、伊藤君のプレー中、少し挑発的に声をかけたのよ。
「まだまだねえ。見られたもんじゃないわ。私よりも下手なんじゃない?」
「そんな言い方、ムッとするな。4月に大学に入るまで、ずっと受験勉強に打ち込んでいたんで、スポーツなんか全くやったことなかったんです。体育会系の部に入る器でもないし、遊び半分で、テニス同好会に入っただけですよ」
「遊び半分じゃ、進歩しそうもないな。私、高校の時、バレーの選手だったのよ。全国大会に出場したことにもあるよ。体力だけには自信があるんだ」
「うわっ、凄い。軟弱な俺、鍛えて下さい。お願いします」
「でも、私もテニスは始めたばかり。お互いに、切磋琢磨して、レベルを上げていきましょう」
「そうですね。よろしくお願いします。あっ、そう、そう、僕、伊藤聡と言います。サトシと呼んで下さい」
「サトシ君、おばさんは遠藤奈津。多分、君より10歳以上は上だわね。でも、ナツって呼び捨てにしていいからね」
「とんでもない。奈津さん、そうはいかないですよ。でも、同じくらいの女の子だと、意識しちゃって、うまく話せないんだけど、奈津さんだと気楽に話せちゃう。安心してしまうのかな。少し甘えたいなあ」
「どんどん甘えていいわよ。私、君みたいな若い男、好きだもの。何でも相談して」
「これから、メキメキ力をつけていく予定です。まず、私と一試合してください。お互いの今の力を確認しましょう」
「望むところよ。おばさんだと思って、甘くみるなよ」
試合は実力伯仲。取ったり取られたり。夢中で白球追う過程で、すっかり心も打ち解け、信頼感、仲間意識が芽生えていたかな。ここまで来たら、ペニス獲得までもう一息よ。試合の方は花を持たせてあげたわ。
すっかり心の距離が近づいたところで、練習の後、明るく健康的に、コートの傍のレストランで、一緒にお食事を楽しんだの。
もちろん、男を探しているなどとはおくびにも出さず、増え気味の体重を元に戻すまではテニスを続けるんだと、秘密を打ち明ける風に、話したのよ。
少しお酒が入ると、やっぱり、男よね。やりたいオーラが出てきたのよ。
「レストランじゃなくて、一度、奈津さんの手料理を食べてみたいなあ」
「あらあら、いつでもご馳走してよ。今度、皆で一緒に我が家に遊びに来てよ」
「は~い。練習が終わった後、土曜日の夜から泊まりがけで、ゆっくり行っていいですか?」
「もちろんよ。手料理だけでなく、他の方もご馳走してよ」
「えっ、 他の方って、何ですか?」
「そんなこと、私の口から言えないわよ。想像して。作ったものではなく、もう出来上がっているもの」
「それ、俺の思っているものだったら、すっごくうれしいです。奈津さんの家に伺うのが、すっごい楽しみになりました」
「受け入れ態勢、もうすっかり出来上がっていてよ。私も楽しみよ」
「ところで、サトシ君、今、お酒飲んでいるけど、君、あきらかに未成年よね」
「すいません。まだ18歳です。見逃してください。僕、早く大人になりたいんです。僕を鍛えてください」
「まかしておけって。ガンガン、鍛えてやっから、さあ、もう一杯いくぞ。今の分、飲んじゃえよ」
サトシ君、本格的に、お酒を飲んだことがなかったみたい。ベロンベロンになって、私の肩にしなだれかかってきたのよ。
「奈津さん、酔っ払ってしまいました。始めての経験です。で、で、もう一つ、始めての経験、してみたいんです」
「あら、何かしら。できることなら、協力するわよ」
「実は、僕、僕、筆下し、まだなんです。もう大学生なんです。今夜にでも、下ろしちゃいたいなあ」
「なんだ。そんなことがして欲しいの。いいわよ。協力してよ。奈津、サトシ君の始めての女になってあげる」
「でも、セックスのやり方、エロビデオで見たくらいで、ほとんど、わからないんです」
「大丈夫よ。奈津が懇切丁寧に指導するわよ。でも、飲み過ぎだな。立つかな? それが心配よ」
気がついたら、近くの連れ込みホテルで、抱き合っていたの。
始めは、立たなかったわ。でも、淫らなキスをして、お互いの身体を舐め合っているうちに、二人共、眠っちゃったの。
でも、若いのね。明け方になったら、立派に立っていたのよ。朝10時にホテルを追い出されるまで、ギンギンに交わったわ。サトシ君、二度、出したのかな。私は、三度、イカされたのよ。
とにかく、無事、筆下し成功。性交も成功よ。
サトシ君、晴れやかな顔をして、帰って行ったわ。私、良いことをしたのよね。爽やかな下半身して、帰ってきたわよ。
久しぶりの若い子との、激しい生セックス、最高に心地よかったわ。
その夜は熟睡できたのよ。
テニスで汗をかいた後、ペニスで汗をかくのが習慣になっちゃったのよ。気きがついたら、駅前のホテルの常連になっていたわ。
ステフと二人のときはテニス愛好会とは言わず、ペニス愛好会と言っているのよ。
ステフも、木村君と遊佐君の二人と付き合っているみたい。駅前のホテルの部屋から3人が一緒に出てきたのにすれ違ったの。さすが、あきれて、言葉が出てこなかったわ。サトシ君と二人で、知らない振りをしちゃったわ。二人と付き合っているというから、セックスは、当然、別々にやっているとのかと思ったわ。そう思うのが常識的よね。なのに、3Pと言うんだっけ、なんと、二人を相手にして、一緒にやっていたんだ。
ステフって、本当に、私に輪をかけた好き者なんだから。
「本当は『野戦病院』って、名前にしたかったんだけどな。それじゃあ、お客さん、来る気が起きないだろうから止めたんさ」
「姉さん、最近、ジイジの影響で、理屈ぽくなたんだって。ステフ、聞いてても、チンチンプンプンなんだよ」
「チンプンカンプンだろ。言葉は正確に覚えろよ。ステフ」
「オホン。奈津、考えるに、都会の現代人は、仕事の効率ばかりを追い求めて、人間的な心はどこかに置き去りにしてしまっている。知らず知らずのうちに、自分の心の動きにも、他人の想いにも、鈍感になってしまっている。平気で他人の心を、いや、自分の心さえも傷つけている。昔の私のアホ亭主みたいにね」
「で、奈津はさらに考える。効率優先とストレス過剰の複雑な現代仕事社会。そこで生きる都会人は、多かれ少なかれ、皆、心に傷を負っている。その傷ついた心を、心の傷の面では先輩の私達が、私達天使二人が、優しく慰めて、癒してあげるのよ。胃の中のアルコール消毒と、おいしい家庭料理と、奈津の温かな毒舌と、ステフの豊満な胸と笑顔で。ジイジ、聞いとるか?」
「聞いてるよ」
「言わば、『C&M』は、現代社会の企業戦士のための野戦病院なのよ。傷ついた可哀想な兵士達の士気を回復させて戦場に戻してあげるんだ。人間的心を取り戻してあげるのよ」
「だってさ。ジイジ、意味、わかっか?」
ジイジ、手をたたく。
「奈津、演説、終わったか。たかが、スナック・バーを経営するのに、ちょっと、その理念、崇高すぎやしないか?」
「ジイジ、たかがとは、何だ。たかがとは。腹が立った。明日はメシ抜きだ」
「そうだ。そうだ。明日はメシ抜きだ。姉さん、それだけじゃなく、反省するまでセックスも抜きにしてやれ」
「ありがたい。当分、反省なんか、しないぞ」
「そいでよ。このところ、ずっとジイジ一本主義で通してきたけどよ、ジイジがしばらくこの家から消えるんだよな。奈津、男なしで生活するなんてことは、金輪際、無理だからな。だから、いい男がいたら、適当にセックス楽しむからな。ジイジと結婚しているわけでもないんだから、不倫でもないよな。だから、ジイジもフィリピンでいい女がいたら、セックスを忘れないように、せいぜい頑張れよ」
「わかった。肉体的な面はそうしよう。つまり、セックスはお互い自由に愉しもう。でも、今まで築きあげた精神的結びつきは絶対に失いたくない。帰ってきたら、もう一度、紙切れ1枚、信じてみないか?」
「なんだよ。それ、ひょっとしてプロポーズか?」
「そうだ。奈津のいない生活は、もう考えたくない。熟年結婚、はやってるし」
「ジイジは確かに熟年だけどよ。あっしはまだ女盛りだで。悩むなあ。でも、ジイジが泣いて頼むというなら、考えてやらないこともないかな」
「奈津が見たいなら、おいおい泣いて土下座して、頭、地面にこすり合わせて頼んでもいい」
「ステフも、見たい。見たい」
「でもよ。結婚したら、車椅子の歳とったジイジのパンパースを交換することまで考えておくことも必要あるな。あっしの未来は介護おばさんかい。ウ~ン。それまでは、自由奔放に生きるからな。男遊びもたっぷりすっからな。そんでも、いいか? ジイジ」
「ノー・ジンジャーだな」
「ジイジ、まだジイジとの間接的な血の繋がりを作ること、諦めていないんだけど・・。期待できそうにないのかなあ」
「歳だからなあ。御免。無理かもしんない」
「歳を取ったときのことを考えると、一人ぼっちだと寂しいわねえ。最近は心が穏やかになったせいか、子供を産むことにあまり抵抗がなくなったみたいなんだ。ジイジのお陰だよな。だから、いい男と楽しんだ結果、妊娠したら、きっと生みたくなると思う。もう一度、シングル・マザーとして頑張ってみようかと思っているんだ」
「トラウマで傷ついていた頃を考えると大進歩だな。うれしいよ」
「そいでよ。ジイジ、子持ちの奈津でも、結婚を申し込むこむ決意はあるか?」
「あるさ。奈津の子なら私も愛せるに決まっているだろ」
「そうか、ジイジ。紙切れの話、受けてやってもいいぞ」
奈津、キッチンで、天ぷらを揚げている。リビングの食卓に、雅美を抱いたステファニーとジイジが掛けている。
「二人して野戦病院で、ナイチンゲールを気取って奉仕活動か。考えてみれば、お前ら、もともと、ないチン・ガールだぞ」
「ジイジ、意味わかんない」
「つまり、チンチンのないガールだってこと」
「うわっ、なによ、それ。ジイジ、最近、姉さんに影響受けて、下品なことを平気で言うようになってる」
「私も、そうじゃないかと自覚しているんだ。下品は伝染するんだ。悪貨は良貨を駆逐するってな」
「そうなんだよな。ステフも、下品なことを平気で言ってしまうんだ。全部、姉さんから伝染したんだからね」
奈津が、天ぷらを運んでくる。
「おいこら、そこの二人、あっしのこと、何か、言ってなかったか。鼻がムズムズしたぞ」
「相変わらず、カンの鋭い、ミス・ゲヒンだな」
「なんだ、それ」
「姉さん、アッカはリョウカをチクチクするんだよ」
「・・・・・」
「ステフ、お店が病院なら、白衣を着て、お店に出ようかな」
「それだけは、やめておけ。コスプレのお店と勘違いされる」
「パパ、コスプレのお店って、な~に?」
「コスチューム・プレーって言ってな。女子高校生やオフィス・レディの制服を着て性的サービスを提供するお店だ」
「わあ、面白そう。ステフ、女子高校生やオフィス・レディのユニフォーム、着てみたいわ」
「ステフ、お前の神経、まともじゃないぞ」
「パパ、ありがとう」
「ほめてなんかいない」
「それで、パパ。性的サービスって、な~に?」
「奈津に聞け」
「ひょっとして、姉さんがいつもパパにやっているようなことじゃない?」
「知っていたら、聞くな。カマトトぶりやがって」
「パパ、カマトトって、な~に?」
「もう、いい。ステフ、おまえのことだ」
「でも、姉さんの女子高生の制服姿、見てみたいな」
「そうだな。ジイジも見たくなった。怖いもの、見たさってあるからな」
奈津、さらに、天ぷらを運んでくる。
「おいこら、また、あっしのこと、何か、言ってなかったか?」
「ジイジがコスプレが好きなんだって。姉さんに女子高生の制服を着せて性的サービスをさせたいんだって」
「・・・・・」
「そんなこと、言っとらん」
「傑作だよな。ジイジとの出会いは、万引きなんだものな。将来の漠然たる不安、悲しみを共有する相手がいない寂しさから、心のバランスを崩していたみたいなの。衝動的に万引きをしてしまったのかな。でも、一期一会の最高の万引きだったわ。こうして、ジイジと知り合えたんだもの。ジイジのお陰で、男性不信のトラウマも克服できたようだし・・」
「雅也とママは、私が殺したって思い、まだまだ、心に残っているの。でも、ジイジと姉さんがいつもそうじゃあないって、言ってくれるでしょ。私って単純だから、最近は,ステフのせいじゃないって、思うようになっている。単純って言うの、良い面もあるのね」
「奈津は今まで付き合ったことがない種類の女性だった。奈津との共同生活で、生き方、考え方、感じ方がすっかり変ってしまった。そろそろ、雅也の愛したフィリピンでボランティア活動をしようと考えているんだ。病気になる以前の自分からの完全脱皮だ」
内野家の3人。失ったものに代る新たな人間関係を作り上げ、新たなる活動に入る時期が来たようだ。
人生は闘いだ。
自己の内部の闘い。自分の夢や理想との闘い。
闘いは充実感をもたらす。
闘いのない人生なんて、炭酸の抜けたコカ・コーラみたいなもの。
そして、闘いの舞台は、フィリピンへと、野戦スナック『C&M』へと移されていく。
・・・・・・・・★12・・・・・・・・
ずっと、ジイジの1本できていたのよね
愛するジイジといつでもセックスできるから我慢していたけど、ジイジがフィリピンに行ってしまった今、無性に若い男が欲しくなっているの。通りで、若いハンサムな男なんかとすれ違ったりすると、むらむらと股の間がうずくのよ。パンティーがじっとりと濡れてしまっているの。
もう我慢するのがつらいわ。我慢汁って、女性にもあるのかしら。
もう開き直ったわ。無駄な抵抗は止めることにしたの。おおっぴらに、男とセックスを楽しむことにしたの。私って、昔から、貞操観念のない、ゆるい女だったのよね。男にいつも開かれている、都合のいい女だったんだから。ジイジのいない間、以前の私に戻るだけよ。
そう心が決まった途端、気が楽になったわ。
どこで、どんな男をハントしようかと、舌なめずりしている私がいたの。本当、私って、はしたない淫らな女なのよね。ウフフフ。
若い男とできる。いい男とやれる。うれしくなってしまったわ。
さあ、男探しよ。張り切ってしまうわ。
夜の街で、やりたがっている男をひっかけるのは、割と簡単なんだけれども、精神的にもルックス的もこちらが納得できるような男があまりいないのよね。私、好き者でも、誰とでも見境なくってわけにもいかないのよ。裸と裸でお互いの汚れている部分も舐め合わなきゃいけないんだものね。私、これでも、男の好みにはうるさいのよ。嫌いな男は、触るのも嫌、一緒に息するのも嫌だもの。
週末になると、駅に行く途中のテニスコートで若くて爽やかな感じの男達がいつもテニスに興じているのよ。その姿を見て、誰か一人、欲しくなっちゃっていたの。抱いて可愛がってあげたい感じの子がいるのよ。アディダスの真っ白いテニスショーツで走り回る男の股間をじっと見つめて、ペニスを啜ってあげている自分の姿なんかを想像しちゃっているの。そんなとき、私って、いやらしい、因果な女なんだと嫌悪感が湧いちゃっていたわ。でも、持って生まれた資質なのよ。しょうがないわよね。
涎を垂らした男達は杉並区のテニス愛好会に属していると、コートの管理人から聞き出したの。
善は急げよ。そこで、ステフを誘って、その会に一緒に入会したの。ステフには、中年女性の体力作りを前面に押し出して、説得したわ。二人でその会の定例会に出ると、学生を中心に、若いスポーツマン志向の、女をあまり知らなそうな男が結構いたのよ。うれしくなっちゃったわ。
でも、ステフは騙せないわね。
「怪しいな、姉さん。体力をつけるんじゃなく、男探しが目的なんでしょ。姉さんにとっては、テニス愛好会じゃなくて、ペニス愛好会なんじゃないの?」
「ちっ、ばれたか。お前、相変わらず、勘だけはいいな」
「急にテニスだなんて、おかしいと思ったわ。若くていい男が大勢いるんだもの。ピーンときたわよ。目的は、テニスじゃなくて、ペニスよね。ウフフ。私も、この会で、ペニス2、3本、調達したいな。姉さんとかぶらないようにするから、いいでしょ」
「そんなこと、個人の自由だろ。5本でも6本でもどうぞ、どうぞ。気が済むまで味わいなさいな。でも、このこと、ジイジには内緒よ。口では強がっているけど、すごく妬いてしまうのがわかるもの。私がやりたいとき、傍にいないのが悪いのよね」
「でも、ステフ、私に雅美を押し付けて、週2、3回、前のお店のお客さんとデートしているんじゃないの?」
「一応、セックスの方は満足しているんだけど。皆、50を過ぎたおじさんばかり。すぐイッてしまうし、淡白なの。かなり物足りないのよ。長い時間、ねちっこく、激しく攻められたいわ。お小遣い、いただけるから、まあ、いいんだだけれど、私、すごく気を使っちゃうの。たまには、若くて威勢のいいお兄さんと私のペースで自由気ままにやりたいわよ」
私、形から入るタイプなの。
テニスラケット、テニスバッグ、ピンクのテニスシューズ、テニスウェアとして、ノースリーブのタンクトップとレギンス。
新しい物、買い揃えたわ。あっと言う間に10万円の出費になっちゃった。でも、新しいペニスの獲得のためと考えれば、安いものよね。
定例会で、いやらしくない程度に面通しだけはしておいたわ。私が股間を舐めてあげる妄想をいだいた細身のイケメンは伊藤君。長身でセンスのいいスポーツマンタイプは遊佐君。筋肉質で胸板の厚いイケイケタイプは木村君、皆、1キロ程、先にある明蹊学院大学の新入生であることが判明したわ。
でも、テニス方は遊佐君以外は、皆、初心者レベル。私とそんなに変わらない感じ。そこで、伊藤君のプレー中、少し挑発的に声をかけたのよ。
「まだまだねえ。見られたもんじゃないわ。私よりも下手なんじゃない?」
「そんな言い方、ムッとするな。4月に大学に入るまで、ずっと受験勉強に打ち込んでいたんで、スポーツなんか全くやったことなかったんです。体育会系の部に入る器でもないし、遊び半分で、テニス同好会に入っただけですよ」
「遊び半分じゃ、進歩しそうもないな。私、高校の時、バレーの選手だったのよ。全国大会に出場したことにもあるよ。体力だけには自信があるんだ」
「うわっ、凄い。軟弱な俺、鍛えて下さい。お願いします」
「でも、私もテニスは始めたばかり。お互いに、切磋琢磨して、レベルを上げていきましょう」
「そうですね。よろしくお願いします。あっ、そう、そう、僕、伊藤聡と言います。サトシと呼んで下さい」
「サトシ君、おばさんは遠藤奈津。多分、君より10歳以上は上だわね。でも、ナツって呼び捨てにしていいからね」
「とんでもない。奈津さん、そうはいかないですよ。でも、同じくらいの女の子だと、意識しちゃって、うまく話せないんだけど、奈津さんだと気楽に話せちゃう。安心してしまうのかな。少し甘えたいなあ」
「どんどん甘えていいわよ。私、君みたいな若い男、好きだもの。何でも相談して」
「これから、メキメキ力をつけていく予定です。まず、私と一試合してください。お互いの今の力を確認しましょう」
「望むところよ。おばさんだと思って、甘くみるなよ」
試合は実力伯仲。取ったり取られたり。夢中で白球追う過程で、すっかり心も打ち解け、信頼感、仲間意識が芽生えていたかな。ここまで来たら、ペニス獲得までもう一息よ。試合の方は花を持たせてあげたわ。
すっかり心の距離が近づいたところで、練習の後、明るく健康的に、コートの傍のレストランで、一緒にお食事を楽しんだの。
もちろん、男を探しているなどとはおくびにも出さず、増え気味の体重を元に戻すまではテニスを続けるんだと、秘密を打ち明ける風に、話したのよ。
少しお酒が入ると、やっぱり、男よね。やりたいオーラが出てきたのよ。
「レストランじゃなくて、一度、奈津さんの手料理を食べてみたいなあ」
「あらあら、いつでもご馳走してよ。今度、皆で一緒に我が家に遊びに来てよ」
「は~い。練習が終わった後、土曜日の夜から泊まりがけで、ゆっくり行っていいですか?」
「もちろんよ。手料理だけでなく、他の方もご馳走してよ」
「えっ、 他の方って、何ですか?」
「そんなこと、私の口から言えないわよ。想像して。作ったものではなく、もう出来上がっているもの」
「それ、俺の思っているものだったら、すっごくうれしいです。奈津さんの家に伺うのが、すっごい楽しみになりました」
「受け入れ態勢、もうすっかり出来上がっていてよ。私も楽しみよ」
「ところで、サトシ君、今、お酒飲んでいるけど、君、あきらかに未成年よね」
「すいません。まだ18歳です。見逃してください。僕、早く大人になりたいんです。僕を鍛えてください」
「まかしておけって。ガンガン、鍛えてやっから、さあ、もう一杯いくぞ。今の分、飲んじゃえよ」
サトシ君、本格的に、お酒を飲んだことがなかったみたい。ベロンベロンになって、私の肩にしなだれかかってきたのよ。
「奈津さん、酔っ払ってしまいました。始めての経験です。で、で、もう一つ、始めての経験、してみたいんです」
「あら、何かしら。できることなら、協力するわよ」
「実は、僕、僕、筆下し、まだなんです。もう大学生なんです。今夜にでも、下ろしちゃいたいなあ」
「なんだ。そんなことがして欲しいの。いいわよ。協力してよ。奈津、サトシ君の始めての女になってあげる」
「でも、セックスのやり方、エロビデオで見たくらいで、ほとんど、わからないんです」
「大丈夫よ。奈津が懇切丁寧に指導するわよ。でも、飲み過ぎだな。立つかな? それが心配よ」
気がついたら、近くの連れ込みホテルで、抱き合っていたの。
始めは、立たなかったわ。でも、淫らなキスをして、お互いの身体を舐め合っているうちに、二人共、眠っちゃったの。
でも、若いのね。明け方になったら、立派に立っていたのよ。朝10時にホテルを追い出されるまで、ギンギンに交わったわ。サトシ君、二度、出したのかな。私は、三度、イカされたのよ。
とにかく、無事、筆下し成功。性交も成功よ。
サトシ君、晴れやかな顔をして、帰って行ったわ。私、良いことをしたのよね。爽やかな下半身して、帰ってきたわよ。
久しぶりの若い子との、激しい生セックス、最高に心地よかったわ。
その夜は熟睡できたのよ。
テニスで汗をかいた後、ペニスで汗をかくのが習慣になっちゃったのよ。気きがついたら、駅前のホテルの常連になっていたわ。
ステフと二人のときはテニス愛好会とは言わず、ペニス愛好会と言っているのよ。
ステフも、木村君と遊佐君の二人と付き合っているみたい。駅前のホテルの部屋から3人が一緒に出てきたのにすれ違ったの。さすが、あきれて、言葉が出てこなかったわ。サトシ君と二人で、知らない振りをしちゃったわ。二人と付き合っているというから、セックスは、当然、別々にやっているとのかと思ったわ。そう思うのが常識的よね。なのに、3Pと言うんだっけ、なんと、二人を相手にして、一緒にやっていたんだ。
ステフって、本当に、私に輪をかけた好き者なんだから。
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by tsado13
| 2011-10-25 16:32
| ゆるい女