・・・・・・・・★1・・・・・・・・
内野は心地よい感覚を下半身に感じながら目を覚ます。
夢と現実の狭間で湧き起る快感。
薄く眼をあけて、甘美な感覚の湧き起る方角をぼんやり見やる。
セミロングの髪の女の頭が内野の敏感な部分で上下に動いている。
まだ夢の世界にいるのか。事態が掌握できない。
ビチャビチャ、ジュルル。ビチャビチャ、ジュルル。シュパシュパ。ジュジュジュ。シュパ、ジュジュジュ。
官能を揺さぶる淫らな響き。幻聴か。
しゃぶっているような。すすっているような。
商売女のように手慣れた仕種。幻覚か。が、不思議なことに、心が温かになっている。
女、やがて目覚めたこちらに気づく。酔いしれた眼。痴呆のような微笑み。
唾液で濡れた口を離す。ふうっと吐息。
うっとりと見つめてくる。掌はまだ愛おしげにしごき続けている。
なんとブツが屹立している。
女はゆっくりと屹立の上にまたがる。
ニュルリ。温かく湿潤な安心感。
やがて体重をかけてゆっくりと回し始める。
次第に激しく、上下に。前後に。螺旋状に。快感の波が襲ってくる。
あえぐ声。酸欠状態に陥った息遣い。泣き声のような動物的なうめき。
明け方の静寂な空気を切り裂く。
痺れる感覚の中、女を下から盗み見る。
歯を食いしばった苦しげな表情。菩薩のような穏やかな表情。
角度によって、瞬間によって、表情が変わる。
営む女は変幻な生き物。悩ましげなマリア。
奈津だ。あの女。昨日の出来事がよみがえる。
いったいどうなっているんだ。石橋を叩いて渡る私の筈なのに・・
高まる快感。こらえきれず発射。
最後に放出したのは遠い遠い昔。いつ誰とだったかも思い出さない。
覆いかぶさって抱きしめてくる奈津。泣いている。
濡れている。身体の内も、外も。
舌を吸い、唾液をたっぷり受け入れる。
できるんだ。できるんだ。まだできるんだ。内野は感動した。
麻痺と充足。けだるさと余韻
心臓の鼓動を鎮める。息を整える。
生きている。生きている。まだ生きている。
勇気が湧いてくる。泣きたくなった。
再生。復活。
そんな言葉が脳裏を駆け巡る。
やれるじゃないか。捨てたものじゃない。
蘇る自信。生きていく確信。
まだ大丈夫。まだ大丈夫。まだまだ大丈夫。天の声が聞こえる。
明るい光が差し込んできた。
・・・・・・・・★2・・・・・・・・
亡くなった妻の美智子の誕生日だった。
内野は、ブルガリの財布を新宿へ買いにいった。
生前の妻に強引に約束させられていたバースデイ・プレゼント。すっかり忘れていた。なのに、今朝になって急に思い出す。
妻に対する罪悪感を忘れ去ろうと思ったわけではない。一生かかえていくつもりでいる。空しい自己満足だとわかっていた。それでもいい。やり場のない心から一時でも自由でいたいと駆り立てられるように新宿に出た。人混みに出るのは、今の内野には冒険。でも、義務感とも使命感ともつかぬ感情につき動かされた出動。
帰りの電車の中で既に後悔していた。部屋に持って帰ればどうなる。心が乱れるだけ。その処置に困ることまで、頭が働かなかった。
阿佐ヶ谷で中央線を降りる。身体が痒い。心の乱れに体が変調をきたしたのかと心配になる。とり越し苦労だった。もう1週間くらい同じ下着を身につけている。何でも内面的問題に結びつけて考えてしまう自分に思わず苦笑。駅近くのスーパーで下着を買うことにする。今夜は風呂に入って新しい下着をつけよう。
2階の日用品売り場は、1階の食品売り場に比べて閑散としていた。
30歳前後の女が一人、素人の内野の眼にもあきらかに不審な動き。
背が高く大柄な女。落ち着かない雰囲気を漂わせている。疲れくたびれ切った心が伝わってくる。腕をさすったり髪を触ったり足踏みをしたり、せわしなく身体を動かしている。
顔立ちは良い。着飾り化粧をすれば間違いなく人目を引く、男好きのする女性。スタイルも良い。着やせするタイプ。付くべきところに無駄なく肉が付いている裸体を想像させる。
グレーのタイトスカート、白いカーディガン、身体にぴったりしたモスグリーンのフリルシャツ、第2ボタンまで開けた胸元を飾る控えめの銀色ネックレス。胸の豊満さ、弾力が伝わってくる。
が、異空間に生きる者のオーラを放射している。
何かにとり憑かれたように自分の中に入り込んでいる。周囲の空間と異次元なところで呼吸している。
故郷の星が同じ宇宙人のような気がしてくる。故郷の言葉で話したくなる。
安物のストッキング、下着、ビタミン剤、財布、電池。手当たり次第に自分のバッグに詰め込みだす。全部500円程度の安物。
内野は理解できなかった。何をしているんだ。自分のしていることがわかっているのか。この空間ではそれは万引きという行為だよ。
正気じゃない。目に異様な光。焦点が定まっていない。夢遊状態で周囲が見えていない。
ピーンとくるものがあった。
部屋に引きこもっていた3ヶ月前の自分に重なる。
助けてやりたい。止めさせなければならない。店の者にすぐに見破られる。
内野は近寄って咳ばらい。それとなく注意を喚起する。女と目が合う。
「君、やめようよ。現実に戻ろう。君は万引きをしている。品物を返そう」
女は一瞬考える。が、無視される。私の存在そのものが見えないといった風に。
さらに二、三の品物をバッグに詰め込むと、階下に降りる。しばらく一階の商品を眺めまわり、そのまま、レジを通らずに外に出ていく。私服の万引き保安員らしき女性が用心深く後を追っている。やっぱりばれている。
やがて、女はその保安員と一緒に引き返してくる。奥の事務所の方へ促がされて入っていく。お店を出たところで確保されたのだ。
女は悪びれた様子もあわてた様子もみせていない。気持ちはこの空間にないようだ。
内野は心地よい感覚を下半身に感じながら目を覚ます。
夢と現実の狭間で湧き起る快感。
薄く眼をあけて、甘美な感覚の湧き起る方角をぼんやり見やる。
セミロングの髪の女の頭が内野の敏感な部分で上下に動いている。
まだ夢の世界にいるのか。事態が掌握できない。
ビチャビチャ、ジュルル。ビチャビチャ、ジュルル。シュパシュパ。ジュジュジュ。シュパ、ジュジュジュ。
官能を揺さぶる淫らな響き。幻聴か。
しゃぶっているような。すすっているような。
商売女のように手慣れた仕種。幻覚か。が、不思議なことに、心が温かになっている。
女、やがて目覚めたこちらに気づく。酔いしれた眼。痴呆のような微笑み。
唾液で濡れた口を離す。ふうっと吐息。
うっとりと見つめてくる。掌はまだ愛おしげにしごき続けている。
なんとブツが屹立している。
女はゆっくりと屹立の上にまたがる。
ニュルリ。温かく湿潤な安心感。
やがて体重をかけてゆっくりと回し始める。
次第に激しく、上下に。前後に。螺旋状に。快感の波が襲ってくる。
あえぐ声。酸欠状態に陥った息遣い。泣き声のような動物的なうめき。
明け方の静寂な空気を切り裂く。
痺れる感覚の中、女を下から盗み見る。
歯を食いしばった苦しげな表情。菩薩のような穏やかな表情。
角度によって、瞬間によって、表情が変わる。
営む女は変幻な生き物。悩ましげなマリア。
奈津だ。あの女。昨日の出来事がよみがえる。
いったいどうなっているんだ。石橋を叩いて渡る私の筈なのに・・
高まる快感。こらえきれず発射。
最後に放出したのは遠い遠い昔。いつ誰とだったかも思い出さない。
覆いかぶさって抱きしめてくる奈津。泣いている。
濡れている。身体の内も、外も。
舌を吸い、唾液をたっぷり受け入れる。
できるんだ。できるんだ。まだできるんだ。内野は感動した。
麻痺と充足。けだるさと余韻
心臓の鼓動を鎮める。息を整える。
生きている。生きている。まだ生きている。
勇気が湧いてくる。泣きたくなった。
再生。復活。
そんな言葉が脳裏を駆け巡る。
やれるじゃないか。捨てたものじゃない。
蘇る自信。生きていく確信。
まだ大丈夫。まだ大丈夫。まだまだ大丈夫。天の声が聞こえる。
明るい光が差し込んできた。
・・・・・・・・★2・・・・・・・・
亡くなった妻の美智子の誕生日だった。
内野は、ブルガリの財布を新宿へ買いにいった。
生前の妻に強引に約束させられていたバースデイ・プレゼント。すっかり忘れていた。なのに、今朝になって急に思い出す。
妻に対する罪悪感を忘れ去ろうと思ったわけではない。一生かかえていくつもりでいる。空しい自己満足だとわかっていた。それでもいい。やり場のない心から一時でも自由でいたいと駆り立てられるように新宿に出た。人混みに出るのは、今の内野には冒険。でも、義務感とも使命感ともつかぬ感情につき動かされた出動。
帰りの電車の中で既に後悔していた。部屋に持って帰ればどうなる。心が乱れるだけ。その処置に困ることまで、頭が働かなかった。
阿佐ヶ谷で中央線を降りる。身体が痒い。心の乱れに体が変調をきたしたのかと心配になる。とり越し苦労だった。もう1週間くらい同じ下着を身につけている。何でも内面的問題に結びつけて考えてしまう自分に思わず苦笑。駅近くのスーパーで下着を買うことにする。今夜は風呂に入って新しい下着をつけよう。
2階の日用品売り場は、1階の食品売り場に比べて閑散としていた。
30歳前後の女が一人、素人の内野の眼にもあきらかに不審な動き。
背が高く大柄な女。落ち着かない雰囲気を漂わせている。疲れくたびれ切った心が伝わってくる。腕をさすったり髪を触ったり足踏みをしたり、せわしなく身体を動かしている。
顔立ちは良い。着飾り化粧をすれば間違いなく人目を引く、男好きのする女性。スタイルも良い。着やせするタイプ。付くべきところに無駄なく肉が付いている裸体を想像させる。
グレーのタイトスカート、白いカーディガン、身体にぴったりしたモスグリーンのフリルシャツ、第2ボタンまで開けた胸元を飾る控えめの銀色ネックレス。胸の豊満さ、弾力が伝わってくる。
が、異空間に生きる者のオーラを放射している。
何かにとり憑かれたように自分の中に入り込んでいる。周囲の空間と異次元なところで呼吸している。
故郷の星が同じ宇宙人のような気がしてくる。故郷の言葉で話したくなる。
安物のストッキング、下着、ビタミン剤、財布、電池。手当たり次第に自分のバッグに詰め込みだす。全部500円程度の安物。
内野は理解できなかった。何をしているんだ。自分のしていることがわかっているのか。この空間ではそれは万引きという行為だよ。
正気じゃない。目に異様な光。焦点が定まっていない。夢遊状態で周囲が見えていない。
ピーンとくるものがあった。
部屋に引きこもっていた3ヶ月前の自分に重なる。
助けてやりたい。止めさせなければならない。店の者にすぐに見破られる。
内野は近寄って咳ばらい。それとなく注意を喚起する。女と目が合う。
「君、やめようよ。現実に戻ろう。君は万引きをしている。品物を返そう」
女は一瞬考える。が、無視される。私の存在そのものが見えないといった風に。
さらに二、三の品物をバッグに詰め込むと、階下に降りる。しばらく一階の商品を眺めまわり、そのまま、レジを通らずに外に出ていく。私服の万引き保安員らしき女性が用心深く後を追っている。やっぱりばれている。
やがて、女はその保安員と一緒に引き返してくる。奥の事務所の方へ促がされて入っていく。お店を出たところで確保されたのだ。
女は悪びれた様子もあわてた様子もみせていない。気持ちはこの空間にないようだ。
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by tsado13
| 2011-10-25 16:52
| ゆるい女